〜魚屋女子の挑戦・第1話〜
「お前が切った刺身が、いちばんおいしい」
そう言ってくれた父は、もういません。
はじめまして。魚屋で働いて12年目、27歳の魚屋女子です。私は今、「天」という屋号で魚の移動販売をしています。
なぜ魚屋なのか。なぜ「天」なのか。
この連載では、私のすべてをお話しします。今日はその第1話です。
きっかけは、兄の一言だった
魚屋との出会いは15歳。
もともと兄が魚屋で働いていて、兄が辞めることになったとき、「代わりに入って」と言われたのがきっかけでした。
自分で選んだ道ですらなかったんです。
正直、ずっと辞めたかった
最初の頃のことは、はっきり言えます。
ずっと辞めたかった。
毎週土日はバイト。友達が遊んでいる週末に、私は魚のにおいの中で働いていました。休みなんてありません。
高校卒業のときには、アパレルで働きたい、テーマパークで働きたい、そんな夢だってありました。
でも、辞め方がわからなかった。
それだけの理由で、私は魚屋を続けていました。
いつの間にか、刺身が切れるようになっていた
不思議なもので、辞められないまま続けているうちに、
できることが増えていきました。
魚がさばけるようになり、刺身が切れるようになっていたんです。
15歳のあの日、嫌々始めた魚屋の仕事。
あのとき辞めていたら、私の人生でいちばん大切な思い出は、
生まれていませんでした。
単身赴任で遠くにいた父に、私の切った刺身を食べてもらう——あの時間です。
その話は、次回。
第2話「父と刺身と、突然の宣告」に続きます。
「読んだよ」の一言だけでも、コメントもらえたら泣いて喜びます。

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